全国一般2003春闘強化の取り組み(その2)

3〜4月段階の取り組み強化について

全国一般第2回中央闘争委員会決定
2003年3月13日
1.春闘をとりまく情勢
(1) 2002年の物価は下落しデフレ現象が強まっている。中小企業を中心とする企業倒産・廃業は相変わらず高水準で推移し、失業率も高止まりしている。
 2003年3月期の大手企業の業績は、産業・企業によってばらつきがあるものの、全体では増益(12%)となっている(日銀「短観」12月)。
(2) 2003年度は、社会保険などの負担増、不良債権最終処理の加速、株安など需要がより低迷する要因が予測されるなかで、「反デフレ、反失業の国民的な運動」(連合)が2003春闘であり、生活実感にもとづく要求を大切にしながら春闘を組織していかなければならない。そのことによって、売上げの減少→リストラ→雇用減・収入減→需要減・市況低迷→企業収益の悪化という悪循環を断ち切るためにも、反失業を基本とした、雇用と生活を守り抜く2003春闘の取り組みが重要となっている。
(3) 日本経団連の賃金水準引き下げという方針のもとで、大手企業では定昇制度の見直し、引き下げが相次いでいる。定昇制度そのものは、70年代に経営者側から「内転費用であり、新たな持ち出しにならない」として提案され定着してきた経過があり、賃金カーブの基礎となっているものである。この見直しは、実質的に賃金引下げに結びつくものであるだけに、春闘とは切り離して賃金制度として別途協議していくというのが連合方針であり、各産別も現行の定昇制度は維持する方向にある。連合登録組合の1年1歳のカーブ維持分は5,700円であり、トヨタ労組では6,500円が確保されている。また、連合集計による定昇相当分は次のとおりである。
 電機連合 6,500円(17中闘組合平均)
 自動車総連 5,902円(メーカー11組合平均)
 情報労連 4,200円(主要16労組平均)
 私鉄総連 6,200円(197組合平均賃金の2.2%)
 UIゼンセン 4,567円(1.71%、155組合単純平均)
 鉄鋼労連 3,700円(総合5組合)
 造船重機労連 6,000円(総合重工7労組)
(4) 経営者側は春闘時に賃金体系の改悪、成果主義賃金導入による総額人件費抑制をすすめつつある。しかし、全国一般組合員の調査でも生活が苦しくなっている(60%)、賃金引上げは切実な課題として多くの組合員が声をあげているなかで、積極的に春闘要求を組織し、生活改善と雇用確保をはかっていくことが大切である。
(5) 賃金引き上げ8,000円要求は中小労働者にとってギリギリの要求である。
@ 賃金カーブ維持分(現行賃金水準確保)として組合員平均260,233円の1.7%、4,420円を確保することである。
A 加えて、生活改善・格差是正分の要求は基本賃金が低い労働者にとっては賃金カーブ分同様に重視して取り組んでいかなければならない。
B さらに、小泉構造改革の「痛み」は一連の社会保障の改悪となって現れてきている。とくに健康保険では、受診した場合に健康保険本人負担が2割から3割になることによって厚生労働省試算では年間で1人平均4,000円(333円/月)の負担増になると国会答弁で明らかにしている。
 さらに健康保険料は労使折半であるが、7.5%から8.2%に上がるとともに、一時金からの同率での徴収が大きな負担となる。全国一般の試算でも標準報酬月額25万円、一時金2か月分(50万円)×2回とした場合、介護保険がある場合(40歳以上)は2,866円、介護保険なし(40歳未満)で2,708円の月々の負担増となることが明らかである(一時金額によって変動する)。
 加えて、厚生年金保険料も料率が17.35%から13.58%に引き下げられるが、一時金からの同率での徴収となるため標準報酬月額25万円、一時金2か月分(50万円)×2回とした場合では月額530円の負担増となる。
 したがって、自らの裁量で使える可処分所得を現状維持するだけでも、健康保険関係及び厚生年金保険料だけみても3,729円(介護あり)から3,571円(介護なし)が必要となる。
2.3,4月の闘いの具体的取り組み
(1) 賃金引き上げ要求を取り組むなかで、回答指定日前の前段交渉のなかで要求趣旨を経営側に徹底していく。とりわけ、大手労組のベアゼロ=賃上げゼロでなく、定昇分はあることを確認し、賃上げゼロや引き下げは許さない強い構えが重要である。連合は、「あらゆる戦術を駆使して、最低でも賃金カーブ確保をはかる」こととしており、統一回答指定日での回答引き出しにこだわっての交渉をすすめていく。
(2) 3月末の第2次回答指定日での有額回答引き出しにむけ、地方本部での戦術設定を行い、誠実に回答しない場合には抗議行動を配置して取り組んでいく。職場集会、腕章・ワッペン闘争、組合旗掲揚、時間外拒否など職場の実態に即した戦術設定を背景に回答引き出しを迫っていく。
(3) また賃金体系や賃金制度改定は、「春季生活闘争とは切り離し別途協議することとし、とくに、経営側からの一方的な定昇の見直しや切り下げを許さない」ことを連合では確認しており、全国一般も春闘は賃金引き上げ・生活改善が主要課題であり、経営側の逆提案については、即座に地方本部と連携して取り組んでいく。
(4) 4月段階では、毎週が山場であるとの確認のもとで精力的な団交を積み重ね、 4月4日、11日、18日に統一交渉日を設定し、遅くとも4月末決着をめざし、24〜25日を全国統一行動日として設定し、未解決分会解決促進の行動配置を行っていく。
(5) 加えて、4月14〜19日の週には中央本部五役・当該ブロック選出役員を軸にして春闘オルグを各地方本部で行い、春闘点検、未解決分会の解決促進、統一地方選激励を展開し、集中した春闘体制を中央―地方一体のものとして取り組んでいく。
3.統一要求の前進と地域共闘の推進
(1) 連合が取り組むミニマム闘争課題では、賃金カーブ維持分確保に加え、「パート労働者の賃金引き上げと企業内最賃の協定化」、「 不払い残業撲滅運動の展開と適正な労働時間管理の協定化」を重点的に取り組んでおり、全国一般も職場点検を取り組んでいく。とりわけ悪質な不払い残業については、告発の取り組みも行っていく。
(2) 定年延長・雇用継続、退職金引上げなど重点課題を設定しての取り組み
 賃金闘争とともに定年延長・60歳以降の雇用継続、退職金引上げ、職場改善要求など統一要求の前進にむけ、取り組みを強化していく。
4.地域共闘強化
(1) 連合も「中小・地場共闘の取り組み強化」の方針を掲げている。その内容は、  「産別、地方連合会、産別地方組織は、一体となって中小・地場組合の交渉を支援する。 3月28日前後に全国で「中小・地場労組アピール行動」を実施する。中央では、同日に国会や関係省庁、経営者団体などへの要請行動を行い、中小対策のほか、雇用保険改悪反対、労基法・派遣法改悪反対についてもアピールを行う。 妥結基準について、具体的には4月8日の三役会議で提示することとする。 中小・地場組合の支援・激励行動を強化するため、4月19日を一つの目安として、各地方連合会ごとに行動日、行動ゾーンを設定する。」との方針を確認している。したがって、全国一般内からさらに地域の仲間との連携強化をすすめていく。
(2) とりわけ、4月段階では地場・中小労組の闘いにとって地域段階での共闘体制はきわめて重要であり、共闘運動の具体化を地方連合に提起していくとともに、自治労など官公労組、春闘賃上げ要求を取り組んでいる私鉄総連など官民労組との連携を追求するなかで春闘の追い上げの闘いを取り組んでいく。
以  上
≪ 参 考 ≫
1.賃下げ・労働条件切り下げとの闘い
T.【労使対等決定原則が前提】
1 不利益変更提案が出された場合、まず労使が確認しなければならないのが、経営者の意思で一方的に変更はしない(させない)ということである。もし、就業規則での一方的変更を強行しても、就業規則は労働協約(労使合意事項)よりは劣位に位置するものであり、無効となる。 しかも、労働基準法第2条では、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。 2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」ことが明記されている。
U【提案理由・背景と今後の展望を明確にさせなければならない】
1 賃金や労働条件の引き下げなど不利益変更が提案されるということは、それなりの経営事情や必要性がなければならないわけであるから、経営困難ならばその要因の究明を行い、さらには決算資料など経営内容を情報開示させていくことが重要である。
(1)合理化の原因の究明
 提案の背景・要因の明確化 @親企業、取引先企業からの圧力、コストダウンによる経営困難、A融資条件の変更など取引先金融機関からのコスト削減の圧力、B売上の減少、価格の低下によるコスト削減の必要性など要因をはっきりさせることが、今後の対策として重要になる。
(2)経営状況の開示と把握
 決算書(過去3期分)の開示は欠かせない。職場の仲間の汗の結晶が決算でどうなっているのか、経営者には開示の義務があるし、とりわけ、そのしわ寄せ(不利益変更)を労働者に申し入れる場合には必要不可欠である。この開示を固持する場合は、便乗型での提案とも指摘できる。また、全国一般中央本部は、企業信用調査会社と提携しているので、格安で企業情報が入手できるので、地方本部を通じて申し込まれること。同時に、企業の状況については、職場組合員からの情報が核心をついていることが多いので、職場からの情報の集中は欠かせない。
(3)経営責任の明確化
 働く者へのしわ寄せを提案するからには、経営者の責任が明らかにされるべきであり、その責任分担を明確にすること。
(4)合理化の実施による今後の展望
 賃下げなど「コスト削減」によって、企業状況の改善・今後の展望が明らかにされなければならない。「企業が大変だから賃下げを」だけでは無責任であり、コスト削減の効果が今後の企業の展望について明らかにされなければ、賃下げなど労働条件の低下は職場のモラルダウンを引き起こすだけのものにしかならない。また、賃下げなどで職場の仲間は企業・雇用・生活への不安を引き起こすものだけに、その不安を解消するためにも今後の経営計画が明らかにされなければならない。
(5)原状回復の手続き・時期等を明示させる
 現行の賃金や労働条件は、これまでの労働組合、労働者の闘いの結果であり、労使合意事項である、したがって、その条件の引き下げは無期限であってはならず、緊急避難的処置ならば、その実施期限は明確にされなければならない。(1)〜(4)までの条件を履行する中でやむを得ないと判断した場合でも実施期間は1年と限定し、1年後には原状回復を原則として対応することが必要である(企業業績が、1年を経たずに回復した場合はそれ以前に回復させる)。
2.今後の取り組み・闘いに向けて
 労働条件の切下げや不利益変更を労組に提案するということは、経営が安泰でないことを示しているわけであるから(安泰での提案ならば、「予防型合理化」、生産性の向上を目指すための「攻撃型合理化」であり、反対の姿勢を明確にして闘っていく必要がある)、今後の対応の準備もすすめていくことが必要である。
@ 雇用・合理化に関する事前協議・同意約款の締結を求めていく。
A 不測の事態に備えて、「労働債権の確定」や「譲渡担保協定」等を取りつける。とくに、退職金債権については、その積立金の確保についても確認する必要がある。
B これらの協定は、今後の闘いの上で重要な位置を占めるものであり、賃上げ時よりも賃下げ・不利益変更される場合こそ労働組合の重要性が発揮されるものである。マスコミなどでは、「賃上げ=労働組合メリット論」が流されているが、賃上げ時よりも、経営危機の深化、賃下げ・雇用危機時こそ労働組合の本領・機能が重要であり、今日の時代こそ労働組合が前面に出ての闘いの重要性がある。
3.別記 労働条件引き下げと労働協約・就業規則
1.労働協約
 労働協約は労使が交渉の結果、結ばれた協定であり、就業規則よりも優先されるものである。この協約は、体系的な労働協約でなく、その都度結ばれたものでも法的には労働協約と位置づけられる。労働協約を下回る水準での就業規則は無効となる。
労働組合法第16条
労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。
 また、労働協約については、労組法15条において、「3年をこえる定をすることが できない」「有効期間のない労働協約は、当事者の一方が相手方に予告(90日)して解約することができる」としているので、3年期間の協定を毎年更新するのが最も望ましい。90日の予告によって、無協約状態にしてくる場合には、協約の余後効、 慣例法での争いに持ち込むなど、一方的な不利益変更は許さないという強い態度が闘いにとって重要である。
 さらに、このような取り組みをすすめるなかで、現行の労働協約・協定の点検を行っていくことが最低限必要である。
2.就業規則
(1)就業規則の位置づけ
 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、労働時間、休日・休暇、賃金、退職に関する事項などについて、所定の手続を経て、就業規則を作成し、行政官庁(労働基準監督署)に届け出なければならない(労基法89条)。
 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、無効となった部分は就業規則で定める基準によることになる(労基法93条)。就業規則は、法令(強行法規)又は当該事業場に適用される労働協約に反してはならないとしている。
労基法92条 (法令及び労働協約との関係)
就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
2 行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。
(2)一方的な不利益変更
 経営者側が就業規則の変更を根拠にして一方的に労働条件を切り下げてきた場合には断固たる闘いを組織していく。働くものの労働条件は、労使が対等に決定するというのが原点であり原則である。経営者側による一方的な労働条件の切り下げを許さないためにも次の事項の点検が必要である。
@ 労組・代表からの意見聴取、法令・労働協約に違反はないか
 事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合の、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、その意見を記した書面を、就業規則を労基署に届け出る際に添付しなければならない。ただし、労組が明確に反対意見を付しても労働基準監督署は就業規則を受け付けるものである。したがって、労働協約に反している場合はその部分は無効であり、違反の部分には拘束されない。
A 変更に合理性があるか 裁判例の考え方
 就業規則の不利益変更は、その変更に合理性がある場合だけ、労働者に対する拘束力をもつ。特に賃金・退職金など重要な労働条件に関する不利益変更は、高度の必要性に基づいた合理性がある場合に限り、労働者に対する拘束力をもつ。ということが一般的な判例となっている。逆に言えば、合理性が認められない限り、労働者は変更後の条項には拘束されないことになる(大曲市農協事件・最高裁判決昭63.2.16労判512号など)。
以  上