2002年11月25日

「不当解雇」ルール法制化論議本格化

共同通信 2002年11月20日


「不当解雇」を抑制するための解雇ルールの法制化をめぐり、厚生労働省の労働政策審議会で「正当な理由がない解雇は無効」とするルール素案が示され、労使の議論が本格化した。増加する解雇に歯止めをかけようとする労働側と、法規制に反対する経営側。一方で急増する契約社員やパート労働者は置き去りにされたまま。ルールづくりが雇用全体の安定につながるかどうかは未知数だ。

素案が示された八日の同審議会。
労働側 一歩前進だが、正当な解雇理由の定義を明確にすべきだ。
経営側 むしろ紛争が増えるし、新たな規制は労使自治への介入だ。
公益側 法の条文に明記すれば予防的措置になり、社会の規範にもなる。

◆三者三様
長引く不況の影響で解雇のトラブルは急増、昨年9月から1年以上の議論を経て、この日の提案となったが、有識者らの公益代表を交え三者の意見は分かれ、結局まとまらなかった。
現在の労働基準法では従業員を解雇する際、使用者は30日前までに予告するか、予告しない場合は30日分以上の賃金を支払うと定めているほかは産休、労災療養中の解雇禁止規定しかない。
素案は最高裁判例に基づき、社会通念上相当と認められない場合は解雇権の乱用だとする法理を採用。しかし、連合側が盛り込むように要求した「整理解雇四要件」(@人員削減の必要性A解雇回避努力B対象者選定の客観・合理性C手続きの妥当性)は採り入れられなかった。この要件は高裁レベルの判決で示されている。

◆本末転倒
厚労省は、解雇無効の場合、労使それぞれが金銭の支払いを裁判所に請求できることも提案したが、労働側からは「使用者側にも金銭解決の道を開くのは危険」との声も上がった。
これについて日本労働弁護団の井上幸夫幹事長は「無効を承知で解雇し、解雇制限の抜け道となる恐れがある。労働者からの請求に限るべきだ」と指摘。
労働者側が勝訴しても、本人の感情などから職場復帰ができないケースが多いことを考慮し、同弁護団も金銭解決を5月の提言に盛り込んだが「使用者による裁判所への請求権を認めると、本人の復職を使用者が封じることが可能になり本末転倒だ」と批判した。

◆雇用転換
ただ実際には、経営側は解雇とは別の手法でリストラを進めている。
現在は将来幹部となる社員を除き、契約社員や派遣・パートに転換させていく流れが加速。5人以上の事業所では、正社員以外の比率が全労働者の26.1%(厚労省の2001年調査)と、1995年調査の8.3ポイント増で、この傾向はとどまりそうにない。
有期雇用の場合は、解雇しなくても契約期間が切れた段階で契約を更新しない「雇い止め」で人員調整が可能だ。雇用調整やコスト削減の手段は多様化し、会社が個人と契約して一定の仕事を委託する「個人請負契約」も急増している。
経営者団体のある幹部は「正社員は早期退職、パートらは雇い止め。人減らしや人件費抑制の手法はいくらでもあるが、特に中小企業では法制化による解雇回避の心理的影響は相当ありそうだ」と話している。
厚労省は12月いっぱいで議論をまとめ、来年一月召集の通常国会に労基法改正案を提出する方針だ。