2002年2月6日

【毎日新聞2002年1月29日夕刊】ルポ6.5 「言いなり春闘」もう嫌

賃下げ底なし……中小労組


 失業率の悪化を背景に、「雇用維持」が最大の課題となった今年の春闘。大手労組が相次いでベア要求を見送るなか、ただでさえ低賃金の中小企業労組は、ベアの自粛ムードに便乗した賃金の切り下げに不安を抱える。 「底なしの賃下げに歯止めを」 。労働者の声を受け、あくまで賃上げ要求にこだわる産別組織も出てきた。

 「大手がベア要求しないのに、賃上げなんてとても無理」との経営幹部の言葉に、労組の書記長(42)は怒りを覚えた。「赤字はあんたらの責任や。従業員に責任転嫁したらあかんで」。社員約40人の大阪府内のガラス製造会社。今年食堂で開かれた労使交渉は、平行線のままだった。
昨年、会社は希望退職で3分の一の社員をリストラした。ここ数年、中国や韓国から低価格の輸入品が押し寄せ、経営が悪化。 「累積赤字は資本金の10倍以上」と経営者から聞かされても、賃上げ要求は見送れない。仲間の賃金は平均22万円。今年は、冬の一時金も凍結されたままだ。
 リストラは、銀行が、融資継続の条件として会社に突きつけたものだった。 「銀行とは、どんな約束をしたんや?」。経営側から、はっきりした答えはない。

 もう、会社の言いなりにはなるまいーーー。社員300人規模のある木工会社の労組は春闘に向けそう確認した。
 一昨年、業績悪化を理由に、35歳以上の全社員を対象に平均8%の賃下げが行われた。昨年の春闘では定期昇給を3分の1程度に削られ、また賃金が下がり、さらに会社は約100人の希望退職に踏み切った。 「そのうちよくなる。それまでの我慢だ」。経営側の言葉に何の説得力もないと、会社の労組委員長(53)は感じる。

 「まず雇用」の大合唱の中、1300の中小企業の労組で組織する全国一般労働組合■(4万6000人)は賃上げにこだわる。今春闘の賃上げ要求は1万2000円。うち4800円は定期昇給に相当する額で、3200円は「生活向上分」、残る4000円は「格差是正分」と名づけた。同労組の平均賃金は、35歳で比較すると、大企業も含めた世間の平均賃金より6万円安い。「格差是正分」は、それをわずかでも埋める要求額という。
 「誰かが指標をつくる気概を見せなければ、中小企業の賃下げは底なしだ。多くの中小企業は、賃上げ交渉を通じてしか経営実態の追及もできない」と田島恵一委員長は訴える。【鮎川耕史】

広がる賃金格差
 大手企業と中小企業の賃金格差が大きくなっている。連合白書によると、2000年の場合、1000人以上の企業の平均賃金水準を「100」とすると、999〜100人規模の企業は「92・2」。99人以下は「91・1」だった。一時金は、999〜100人で「81・1」、99人以下は「63・0」とさらに差が大きい。
 「格差は95年以降、拡大傾向」 「中小企業の労働者は、生活水準の切り下げの危機に直面している」と、連合白書は指摘している。